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共有名義の実家を売るには?共有者全員で売る手続きと代金の分け方、税金の扱い

兄弟で相続した実家が共有名義のまま、という話はとてもよくあります。誰も住む予定がないなら売ってしまうのがいちばんすっきりしますが、共有の家は「誰かひとりが決めて売る」ことができません。

この記事では、共有者が全員で家ごと売るときの進め方に絞って、手続きの流れ、話のまとめ方、売れたお金と費用の分け方、税金の扱いを順に整理します。自分の持分だけを売りたい場合は、仕組みも注意点もかなり違うので共有持分だけ売却できる?をご覧ください。

共有名義の家を売るには、共有者全員の同意がいる

ひとつの不動産を複数人で持っている状態が共有で、それぞれの所有割合を持分といいます。親の家を3人の子が3分の1ずつ相続して登記していれば、3人の共有です。

共有の不動産について何ができるかは、民法で行為の重さごとに決まっています。

行為の種類 例 必要な同意
保存行為 雨漏りの応急修理など現状維持 各共有者がひとりでできる
管理行為 短期の賃貸、外壁塗装などの軽微な変更 持分価格の過半数
変更行為 売却、建て替え、解体 共有者全員

家と土地をまるごと売るのは変更行為にあたるため、共有者全員の同意が必要です(民法251条)。2023年4月の民法改正で、形や使い道を大きく変えない「軽微変更」は過半数で決められるようになりましたが、売却が全員同意であることは変わっていません。

逆にいえば、全員が「売る」で一致していれば、共有でない家と同じように普通の売却ができます。買主にとっても単独名義の物件と変わらないので、持分だけを売るよりずっと高く売れるのが一般的です。

全員で売るまでの流れ

1. 登記を見て、誰が何割持っているかを確かめる

最初にやるのは、法務局で登記事項証明書を取り、名義と持分を確かめることです。親が亡くなったあと名義が親のままになっている場合は、売る前に相続登記が必要です。2024年4月1日からは相続登記が義務になり、相続で取得したと知った日から原則3年以内に申請しなければなりません。手続きの進め方は親名義のままの実家は売れるのか?にまとめています。

遺産分割がまだなら、ここで「実家は売って、代金を分ける」と遺産分割協議書に書いておく方法(換価分割)もあります。誰がどれだけ受け取るかを協議で決められるので、後で触れる代金の分け方の問題を整理しやすくなります。

2. 売る条件を共有者で決めておく

全員が売ることに賛成でも、条件で意見が割れることはよくあります。とくに揉めやすいのは次の4点です。

ひとつは最低価格です。「いくらまでなら下げてよいか」を先に決めておかないと、買主から値下げ交渉が来るたびに全員の意見を聞き直すことになります。ふたつめは売却の期限で、「半年で売れなければ価格を見直す」「1年で売れなければ買取も検討する」といった区切りです。みっつめは窓口役です。不動産会社とのやりとりを誰が受けるかを決め、ほかの共有者には定期的に共有します。よっつめは費用の立て替えで、片付けや測量、解体などの費用を誰がいったん払い、どう精算するかです。

話がまとまったら、簡単なメモでもいいので書面に残し、全員で確認しておくと後のトラブルを防げます。家族会議の進め方は実家をどうするか兄弟で決める「家族会議」の進め方も参考にしてください。

3. 媒介契約と売買契約は全員が当事者になる

不動産会社に仲介を頼む媒介契約も、買主との売買契約も、共有者全員が売主として署名・押印するのが基本です。遠方に住んでいて立ち会えない共有者がいる場合は、ほかの共有者などに委任状を出して代理してもらう方法がとられます。委任状の書き方や本人確認のやり方は不動産会社や司法書士が案内してくれるので、早めに「共有者のひとりが遠方にいる」と伝えておくと段取りがスムーズです。

引き渡しの日には、売却代金の受け取りと同時に所有権移転登記をします。このときも全員の書類(印鑑証明書など)がそろっている必要があるため、決済日はなるべく早く全員に伝えておきましょう。

売却代金と費用はどう分けるか

売却代金は、登記上の持分の割合で分けるのが原則です。3人が3分の1ずつなら、代金も3分の1ずつになります。

仲介手数料や測量費、解体費、残置物の処分費といった売るためにかかった費用も、持分の割合で負担するのが分かりやすい方法です。ひとりが立て替えていたなら、決済時にその分を先に精算してから残りを分けます。

注意したいのは、持分と違う割合で代金を分けたときです。たとえば持分は3分の1ずつなのに「実家の面倒を見てきた長男が半分」とすると、長男が持分を超えて受け取った分は、ほかの兄弟からもらったものとして贈与税の対象になるおそれがあります(国税庁「No.4402 贈与税がかかる場合」)。分け方に差をつけたいなら、遺産分割の段階で取り分を決める(換価分割)か、事前に税理士に相談しておくのが安全です。

税金は共有者ひとりひとりにかかる

譲渡所得は持分ごとに計算し、各自が確定申告する

家を売って利益が出ると、譲渡所得として所得税・住民税がかかります。共有の家を売った場合は、それぞれの共有者が自分の持分について譲渡所得を計算し、各自で確定申告をします。

相続した家の場合、取得費と取得時期は亡くなった親のものを引き継ぎます(国税庁「No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」)。親が長く持っていた家なら、売った年の1月1日時点で所有期間が5年を超える長期譲渡所得になり、税率は所得税15%と住民税5%、これに復興特別所得税(所得税額の2.1%)が加わります(国税庁「No.3208 長期譲渡所得の税額の計算」)。買ったときの金額が分からない場合は、売却価格の5%を取得費とすることができます。

空き家の3,000万円控除は相続人ごとに使える

親がひとりで住んでいた家を相続して売る場合、要件を満たせば「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除」が使えます。この控除は家を相続した相続人ごとに適用できますが、2024年1月1日以後の譲渡で、その家と敷地を相続した相続人が3人以上いる場合は、1人あたりの上限が2,000万円になります(国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」)。

昭和56年5月31日以前に建てられた家であることや、売る前に耐震改修か取り壊しが必要なことなど、要件はかなり細かく、期限もあります。詳しくは空き家の3,000万円特別控除とは?で整理しています。

設例で効果を見てみます。3人の兄弟が3分の1ずつ相続した実家を3,000万円で売り、取得費は分からないので売却価格の5%(150万円)、仲介手数料などの譲渡費用は合計120万円だったと仮定します。1人あたりの譲渡所得は、1,000万円から取得費50万円と譲渡費用40万円を引いた910万円です。空き家の特例が使えれば、3人とも2,000万円の控除で税金はかかりません。使えなければ、1人あたり約185万円(910万円×20.315%)の税金になります。

一方、共有者のうち実家に住んでいた人がいる場合、その人はマイホームを売ったときの3,000万円控除(国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」)の対象になり得ます。住んでいなかったほかの共有者は対象外なので、同じ家を売っても兄弟で税額が変わることがあります。

相続税を払った人は、相続税の申告期限の翌日から3年以内に売れば、払った相続税の一部を取得費に加えられる特例もあります(国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」)。空き家の特例とはどちらか一方を選ぶ形になるので、どちらが得かは税理士や税務署で確認してください。

共有者のひとりが反対している、連絡が取れないとき

全員の同意が取れない場合、家ごと売る方法は使えません。取れる手段は大きく分けて3つです。

自分の持分だけを売る方法は、ほかの共有者の同意がいりません。ただし買い手が専門の買取業者などに限られ、価格はかなり下がりやすいので、共有持分だけ売却できる?で売る前に試すべきことを確認してから判断するのがおすすめです。

話し合いがつかなければ、共有物分割請求で共有関係の解消を求めることができます(民法258条)。裁判所は、土地を分ける現物分割、ひとりが取得してほかの共有者にお金を払う賠償分割、競売にかけて代金を分ける換価分割の順に検討します。

調べても所在が分からない共有者がいる場合は、2023年4月に始まった制度で、裁判所の決定を得てその人の持分を取得したり、第三者に譲渡したりできるようになりました(民法262条の2・262条の3)。どちらも裁判所の手続きなので、弁護士や司法書士への相談が前提になります。

早めに動いたほうがいい理由

共有のまま時間がたつと、選べる道が狭くなっていきます。共有者の誰かが亡くなればその子どもたちに持分が引き継がれ、話し合う相手が増えます。相続登記には3年の期限があり、遺産分割も相続開始から10年を過ぎると原則として法定相続分で分けることになります。空き家の特例も、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る必要があり、制度自体の期限は2027年12月31日までの譲渡です。

全員が元気で連絡が取れるうちに、売るかどうか、売るならどの条件で、という話を始めておくのが、結局いちばん手取りも多く、関係もこじれにくい進め方です。

自分のケースで何から始めるかを確かめる

共有名義の実家は、共有者の人数や関係、物件の状態、相続手続きがどこまで進んでいるかで、最初にやるべきことが変わります。

家じまい診断では、物件の種類や所在地、名義の状態などにいくつか答えるだけで、売却の難しさや向いている選択肢・相談先の傾向を無料で確認できます。氏名や連絡先の入力は不要です。兄弟と話し合う前の現状整理にお使いください。


※本記事は2026年10月時点の法令・情報をもとに作成しています。共有不動産の売却や税金の取り扱いは個別の事情によって異なります。具体的なケースについては、弁護士・司法書士・税理士などの専門家や税務署にご確認ください。

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※ 本記事は一般的な情報の提供を目的としたものであり、個別の物件の評価や税務・法務のアドバイスを行うものではありません。具体的な判断にあたっては、宅地建物取引業者などの専門家にご相談ください。