空き家の3,000万円特別控除とは|要件チェックリスト・期限・使えないケースをわかりやすく解説
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公開日: 2026年7月17日
相続した実家を売って利益(譲渡所得)が出ると、通常は約20%の税金がかかります。しかし一定の要件を満たす「相続した空き家」の売却では、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例があり、多くのケースで税額がゼロか大幅減になります。いわゆる「空き家の3,000万円特別控除」(租税特別措置法35条3項)です。
ただしこの特例は要件が細かく、期限も2つあり、使えるかどうかで手取りが数百万円変わることがあります。この記事では、要件をチェックリスト形式で整理し、見落としやすい例外・改正点・手続きまで解説します。
どれくらい税金が変わるのか——設例で確認
まず効果のイメージです。長期譲渡所得の税率は20.315%(所得税・復興特別所得税・住民税の合計)です。
設例:相続した実家(親が昭和55年築の戸建てに一人暮らし)を2,000万円で売却。購入時の契約書が見つからず取得費は概算(売却価格の5%=100万円)、譲渡費用100万円とします。
- 譲渡所得:2,000万円 −(100万円+100万円)= 1,800万円
- 特例なし:1,800万円 × 20.315% = 約366万円の税金
- 特例あり:1,800万円 − 3,000万円(控除しきれる)= 課税譲渡所得0円 → 税額0円
親の代からの家は購入時の書類が残っておらず取得費が低くなりがちなため、この特例の有無がそのまま数百万円の差になる構図です。
要件チェックリスト——「家」「相続時の状況」「売り方」の3グループ
① 家屋の要件
- 昭和56年(1981年)5月31日以前に建築された家屋であること(旧耐震期の建物が対象)
- 区分所有建物でないこと——一般的な分譲マンションは対象外。戸建てが前提です
② 相続開始時の状況
- 相続開始の直前に、被相続人(亡くなった親など)がその家に一人で住んでいたこと。同居人がいた場合は対象外です
- 老人ホーム入居の例外:亡くなった時点で老人ホーム等に入所していた場合でも、(1)要介護認定等を受けて入所した、(2)入所後もその家が貸付け等に使われず一定の管理がされていた、などの要件を満たせば対象になります(2019年4月1日以後の譲渡から)。「施設で亡くなったから使えない」と思い込むのは早計です
③ 相続してから売るまで
- 相続から売却まで、賃貸・事業・居住に使っていないこと(空き家のままであること)。「売れるまで貸しておこう」とすると要件を失います
- 売却代金が1億円以下であること
- 耐震基準を満たすよう改修して売る、または取り壊して売ること。2024年1月1日以後の譲渡では、買主が譲渡の翌年2月15日までに耐震改修または取壊しを行う場合も対象になり、使い勝手が大きく改善されました
- 配偶者や親族など特別な関係者への売却でないこと
2つの期限——とくに「2027年末」に注意
期限は2つあり、両方を満たす必要があります。
- 相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること(例:2024年6月相続なら2027年12月31日まで)
- 特例自体の適用期限が2027年(令和9年)12月31日までであること
つまり現行制度のもとでは、どんなに相続が新しくても2027年末までに売却を終えなければこの特例は使えません。延長されるかは現時点で未定です。相続した旧耐震の実家を「いずれ売る」つもりで置いている方は、この期限から逆算して動く必要があります。相続登記や遺産分割がまだの場合は、その手続き期間も見込んでおいてください(流れは相続した家・不動産の売却ガイドを参照)。
見落としやすい改正点・注意点
- 相続人が3人以上だと控除額は1人2,000万円:2024年1月1日以後の譲渡から、その家を相続した相続人が3人以上の場合、1人あたりの控除額が2,000万円に引き下げられました
- 取得費加算の特例とは選択制:相続税を納めた人が使える「取得費加算の特例」(措置法39条)と、この空き家特例は同じ物件で併用できません。どちらが有利かは相続税額と譲渡益の大きさで変わるため、試算して選ぶ必要があります
- 取壊して売る場合:取壊し後、譲渡までの間にその敷地を貸駐車場などに使うと対象外になります
- 確定申告が必須:税額がゼロになる場合でも、申告しなければ適用されません
手続きの流れ——「確認書」の取得を忘れずに
- 市区町村で「被相続人居住用家屋等確認書」を取得:その家が相続開始直前に被相続人の居住用だったこと等を市区町村が確認する書類です。電気・ガスの閉栓証明や空き家の管理状況が分かる書類などの添付を求められます(必要書類は市区町村に確認)
- 売買契約・引き渡し:耐震改修・取壊しのタイミングと契約条件を整理(2024年以降は買主側対応の特約も選択肢)
- 確定申告:売却した年の翌年2月16日〜3月15日に、確認書・登記事項証明書・売買契約書の写しなどを添えて申告
老朽化した実家は仲介で買い手がつきにくい一方、この特例は期限が動きません。空き家や訳あり物件を直接買い取る業者への売却は、価格は市場より下がる傾向があるものの「期限内に確実に売却を終える」手段になり、取壊し・耐震改修の扱いを買主側と調整しやすい面もあります。残置物が多い実家の片付けから考えたい方は実家の片付け・遺品整理の費用相場と進め方もどうぞ。
自分のケースで使えるか・どう売るかを整理する
空き家特例は「使えるかどうか」の確認と「期限内に売り切る」段取りがセットで初めて意味を持ちます。物件が旧耐震の戸建てか、相続時の親の居住状況、遺産分割の進み具合、そして買い手がつく物件かどうか——この組み合わせで取るべき動きが変わります。
家じまい診断では、物件の状況にいくつか答えるだけで、売却の難易度と向いている選択肢・相談先の傾向を無料で確認できます。氏名や連絡先の入力は不要です。なお、特例の適用可否や有利判定は個別事情によるため、最終判断は税理士または税務署に確認してください。
※本記事は2026年7月時点の法令・税制(国税庁タックスアンサー等)をもとに作成しています。税の特例は要件の細部や改正によって取り扱いが変わり、適用可否は個別の事情によって異なります。具体的なケースについては、必ず税理士・税務署にご確認ください。
※ 本記事は一般的な情報の提供を目的としたものであり、個別の物件の評価や税務・法務のアドバイスを行うものではありません。具体的な判断にあたっては、宅地建物取引業者などの専門家にご相談ください。