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相続放棄したら家はどうなる?管理責任は残るのか、改正民法940条と放棄前に確認すべきこと

「田舎の実家、いらないから相続放棄しようと思う」——資産価値の乏しい家や、借金と一緒に相続する家を前に、相続放棄を考える人は増えています。ただ、「放棄すればすべてから解放される」と考えているなら、その理解にはいくつか重大な穴があります。

この記事では、相続放棄の基本を押さえた上で、放棄した家がその後どうなるのか、放棄しても管理責任が残るのはどんな場合か(2023年施行の改正民法940条)、そして放棄の前に必ず確認すべきことを整理します。

相続放棄の基本——3ヶ月・家庭裁判所・全部放棄

相続放棄は、家庭裁判所に申述して初めて成立する手続きです。親族間で「私はいらない」と話すだけでは法的な放棄になりません。基本のルールは次のとおりです。

  • 期限:自分が相続人になったことを知ったときから3ヶ月以内(熟慮期間・民法915条)。財産調査が終わらない場合は、期間内に家庭裁判所へ伸長の申立てができます
  • 効果:放棄が受理されると、初めから相続人でなかったことになります(民法939条)
  • 全部放棄が原則:「家はいらないが預金はもらう」という選び方はできません。プラスの財産も含めてすべて手放します
  • 撤回不可:一度受理された放棄は、原則として撤回できません(民法919条)

放棄した家は誰のものになるのか

自分が放棄しても、家が宙に浮いてすぐ国のものになるわけではありません。順番に見ていきます。

① 次順位の相続人に移る

相続放棄をすると、相続権は次の順位へ移ります。子全員が放棄すれば親(直系尊属)へ、親もいなければ・放棄すれば兄弟姉妹へ——という連鎖です。つまり自分が放棄した「いらない家」は、おじ・おば・いとこ側など、親族の別の誰かの問題になります。放棄したことは自動では通知されないため、トラブル防止のには次順位の親族へ一報を入れておくのが実務上の礼儀です。なお、放棄では代襲相続は生じません(放棄した人の子に権利が移ることはありません)。

② 全員が放棄したら——相続財産清算人

相続人になり得る人が全員放棄すると、相続財産は法人化し、利害関係人(債権者など)や検察官の申立てにより家庭裁判所が相続財産清算人(2023年4月の民法改正で「相続財産管理人」から名称変更)を選任します。清算人が財産を換価して債権者へ支払い、残余があれば国庫に帰属させます。

ここで重要なのが費用です。清算人の報酬等に充てるため、申立人は予納金を求められるのが通常で、事案にもよりますが数十万円〜100万円程度が目安とされます。「誰も申立てをしなければ、清算人は選ばれず、家は放棄された状態のまま誰にも管理されず残り続ける」——これが空き家問題の一因にもなっています。

「放棄すれば管理しなくていい」は半分誤解——改正民法940条

かつての民法940条は文言が曖昧で、「放棄しても次の管理者が決まるまで管理義務が残る」と広く(ときに過剰に)解釈されていました。2023年4月施行の改正で、この点が明確になりました。

現在のルールでは、保存義務を負うのは**「放棄のときに、その財産を現に占有していた」場合だけ**です。

  • 義務が残る例:実家に同居していた、鍵を管理して事実上その家を管理していた——この場合、他の相続人または相続財産清算人に引き渡すまで、自分の財産と同一の注意をもって保存する義務が続きます
  • 義務がない例:遠方に住んでいて実家に関与していなかった相続人は、放棄すれば保存義務を負わないことが明確になりました

つまり「実家に住んでいる・管理している人が放棄する」ケースでは、放棄しても引き渡し先が現れるまで解放されないのが実情です。全員放棄で清算人も選任されないままなら、事実上の管理状態が延々と続きかねません。放置された空き家に何が起きるか(倒壊・近隣への賠償リスクなど)は空き家を放置するとどうなる?で解説したとおりで、占有が続く限りこのリスクからも自由になれません。

放棄できなくなる罠——遺品の処分と単純承認

相続放棄を検討している段階で、やってはいけないことがあります。相続財産の全部または一部を処分すると、相続を承認したもの(法定単純承認・民法921条)とみなされ、放棄が認められなくなるおそれがあるのです。

  • 危険な行為の例:実家の売却・取壊し、遺品の売却、預金の解約・費消、車の名義変更、賃貸に出す
  • 一般に問題ないとされる行為の例:経済的価値のない遺品の形見分け、社会通念上相当な範囲の葬儀費用の支払い、腐敗物の処分などの保存行為——ただし境界は事案ごとの判断です

「とりあえず実家を片付けてから考えよう」が命取りになり得ます。放棄の可能性が残っているうちは家財に手をつけず、先に弁護士・司法書士へ相談してください。遺品整理の進め方と注意点は実家の片付け・遺品整理の費用相場と進め方にもまとめています。

放棄と売却、どちらが合理的か

相続放棄は強力な手段ですが、「家がいらない」だけを理由に選ぶと損をすることがあります。判断軸はシンプルです。

  • 債務超過(借金 > 財産) → 放棄が合理的。熟慮期間内の財産調査を最優先に
  • 借金はない・少ないが、家がいらない → 放棄は過剰な選択肢になり得ます。放棄すれば預金など他の財産もすべて失い、家の問題は親族へ移るだけです。まず「その家は本当に売れないのか」を確かめる価値があります

「田舎の古い家だから売れない」と思われていた物件でも、空き家・訳あり物件を専門に扱う買取業者には需要があるケースがあります。数十万円でも売れれば、放棄と違って手元にプラスが残り、管理責任の問題も完全に手離れします。相続した家の売却手順は相続した家・不動産の売却ガイドを参照してください。

判断の順序

①財産調査(借金の有無)→ ②債務超過なら放棄(3ヶ月以内・遺品に手をつけない)→ ③そうでなければ「売れるか」を確認 → ④売れないときに初めて、持ち続ける・国庫帰属などの手段と比較する。放棄は撤回できないため、この順序を飛ばさないことが大切です。

「放棄しかない」と決める前に、家の出口を確かめる

相続放棄は3ヶ月の期限がある一方、撤回のきかない選択です。その家に本当に買い手がつかないのか、管理責任は誰に残るのか——事実を確かめないまま放棄に踏み切るのは、順序が逆です。

家じまい診断では、物件の状況にいくつか答えるだけで、売却の難易度と向いている選択肢・相談先の傾向を無料で確認できます。氏名や連絡先の入力は不要です。放棄すべきか売るべきか迷っている段階の方こそ、まず家の現在地を整理してみてください。放棄そのものの手続き・可否の判断は、弁護士・司法書士にご相談ください。


※本記事は2026年7月時点の法令・情報をもとに作成しています。相続放棄・限定承認・財産調査は期限のある法律手続きであり、個別の事情によって取り扱いが異なります。具体的なケースについては、弁護士・司法書士などの専門家に早めにご確認ください。

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※ 本記事は一般的な情報の提供を目的としたものであり、個別の物件の評価や税務・法務のアドバイスを行うものではありません。具体的な判断にあたっては、宅地建物取引業者などの専門家にご相談ください。