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アパート経営は本当に相続税対策になるのか?評価が下がる仕組みと「裏目に出る」5つのケース

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「更地にアパートを建てれば、相続税が大きく下がりますよ」——土地を持っていると、建築会社や銀行からこうした提案を受けることがあります。相続した土地の活用を調べ始めた方なら、一度は目にするフレーズのはずです。

先に結論を書くと、評価が下がる仕組み自体は本当です。ただしそれは「アパート経営という事業が成り立つ場合に、結果としてついてくる効果」であって、節税だけを目的に建てると裏目に出る構造がいくつもあります。実際に、行き過ぎた駆け込み対策が課税当局に否認された最高裁判決も出ています。

この記事では、仕組みを正確に押さえたうえで、「対策になるケース」と「ならないケース」の見分け方を整理します。

なぜ相続税が下がるのか——評価の仕組み

相続税は、亡くなった時点の財産の相続税評価額に対してかかります。現金はそのままの額で評価されますが、不動産、とくに賃貸不動産は評価の計算方法が違います。ここに評価差が生まれます。

建物——建築費より低く評価され、貸せばさらに下がる

建物の相続税評価は固定資産税評価額が基準です。固定資産税評価額は建築費より低くなるのが一般的で、建築費の5〜6割程度になる例が多いと言われます。さらに、賃貸に出している建物(貸家)は借家権割合(30%)の分が控除されるため、評価は固定資産税評価額の7割になります。

仮の前提で桁感だけ示すと、建築費1億円のアパートの固定資産税評価額が5,500万円だった場合、貸家としての評価は5,500万円×0.7=3,850万円。現金1億円で持っているのと比べて、評価上は6,000万円超の差になります(あくまで仮の数字で、評価額は建物の構造・仕様・地域で変わります)。

土地——貸家建付地の評価減と小規模宅地等の特例

アパートの敷地は「貸家建付地」として評価され、自用地(自分で使う土地)より下がります。

貸家建付地の価額 = 自用地としての価額 −(自用地としての価額 × 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)

借地権割合60%の地域なら、60%×30%=18%(満室の場合)の評価減です。さらに要件を満たせば**小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等)**により、200㎡までの部分の評価が50%減額されます。

ここで重要な制限がひとつ。相続開始前3年以内に新たに貸付を始めた土地は、この特例の対象外が原則です(3年を超えて事業的規模の貸付を行ってきた場合を除く)。「相続が近づいてから急いで建てる」対策には、制度上の歯止めがすでにかかっています。

「借金をすれば相続税が減る」は誤解

アパート建築とセットで語られがちなのが「借入で建てれば借金が財産から引かれるので二重にお得」という説明です。これは仕組みの理解として正確ではありません。

たしかに借入金は債務控除として遺産から差し引かれます。しかし、借りた1億円で建てた建物という財産も同時に増えているので、差し引きで見れば、評価を下げているのは「現金・借入金が建物・土地という評価の低い資産に変わったこと」だけです。現金で建てても借入で建てても、評価圧縮の効果は同じです。

借入がもたらすのは節税ではなくレバレッジです。手元資金がなくても事業を始められる代わりに、空室でも返済は続きます。「借金=節税」と理解してしまうと、必要のない借入リスクを背負う判断につながります。

裏目に出る5つのケース

① 空室が続き、事業の赤字が節税額を食いつぶす

相続税の節税額は一度きりですが、アパート経営の収支は数十年続きます。需要のない立地で建てれば、空室・家賃下落・修繕費で節税額を超える損失が出ることは十分あり得ます。しかも空室が増えると賃貸割合が下がり、貸家建付地の評価減まで小さくなります。節税の面から見ても、**成立の条件は「賃貸事業として回ること」**なのです。

② 相続直前の駆け込みが否認される

評価通達どおりの評価が「著しく不適当」な場合、課税当局は別の評価(鑑定評価など)で課税できます(財産評価基本通達6項)。実際に、相続直前の借入による不動産購入で相続税を大きく圧縮した事案について、通達評価を認めず追徴課税を適法とした最高裁判決が令和4年に出ています。節税効果だけを狙った直前の対策は、税制・判例の両面から通りにくくなっていると考えるべきです。

③ 分けにくい財産になり、遺産分割でもめる

現金は1円単位で分けられますが、アパート1棟は分けられません。相続人が複数いる場合、共有名義での相続は将来の売却・建て替えの合意形成を難しくします。節税はできたが兄弟間の火種を残した、では本末転倒です。誰が引き継ぐのか、他の相続人には何を渡すのかまで含めて、建てる前に設計しておく必要があります。

④ 納税資金が足りなくなる

評価は下がっても、相続税は原則として現金で納める必要があります。財産の大半を収益不動産に変えてしまうと、いざ相続のときに納税資金が足りず、急いで不利な条件で売却する事態になりかねません。手元に残す現金とのバランスも対策の一部です。

⑤ 「数年貸してから売る」で税の特例を失う

相続した実家の敷地に賃貸を建てる・貸すと、売却時の空き家の3,000万円特別控除(貸付の用に供していないことが要件)は使えなくなります。売却の可能性が残っているなら、特例の要件を確認してからにしてください。

サブリース(一括借り上げ)は「保証」の言葉で判断しない

「30年一括借り上げ・家賃保証」という提案でも、契約書には数年ごとの賃料改定条項が入っているのが一般的で、保証賃料が将来下がる可能性は残ります。誇大広告の禁止などを定めた賃貸住宅管理業法の規制もできています。改定条項と解約条件を読んで判断してください(詳しくは土地活用の記事で解説しています)。

それでも「対策になる」のはどんな場合か

ここまでのリスクを裏返すと、アパート経営が相続税対策として機能する条件が見えてきます。

  • 賃貸需要が実際にある立地である(駅距離・周辺の空室状況・人口動態)
  • 節税を抜きにしても、事業として収支が回る(空室率を織り込んだ手取りがプラス)
  • 相続までに時間がある(3年縛りと駆け込み否認リスクを避けられる)
  • 承継の設計ができている(誰が引き継ぐか・納税資金・他の相続人への手当て)

順番が大切です。需要 → 収支 → 承継 → 税の順で確認し、税は最後に「ついてくる効果」として計算に入れる。この順番が逆になっている提案は、いったん持ち帰って検証すべきサインです。

検証のしかた——1社の収支計画だけで決めない

アパート経営の提案書は、想定家賃・稼働率・金利・修繕費の前提の置き方しだいで、同じ土地でもまったく違う絵になります。建築会社はそれぞれ得意な工法・企画を軸に提案するのが自然なので、1社の提案だけでは前提が妥当かどうか判断できません。

  • 複数社からプラン・収支計画・市場調査を取り寄せ、前提条件の違いを見比べる
  • 「満室想定」ではなく空室率を織り込んだ数字で比較する
  • 節税額の試算は、相続財産全体を把握している税理士に別途確認する(建築会社の試算だけで判断しない)
  • アパート以外の活用(駐車場・戸建て賃貸・事業用定期借地など)や、売却した場合の手取りとも並べて比べる——選択肢の全体像は相続した土地・実家を「売らずに活かす」選択肢にまとめています

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相続税対策としてのアパート経営は、賃貸事業として成り立つ土地でだけ成立します。そしてその見極めは、節税の計算より先に済ませるべき仕事です。需要が見込みにくい土地なら、活用より売却を軸に考えるほうが資産を守る結果になることも少なくありません。

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※本記事は2026年8月時点の法令・情報をもとにした一般的な情報提供であり、個別の物件の査定・媒介や税務のアドバイスを行うものではありません。記載の数値例は仮の前提にもとづく桁感の目安です。相続税の評価・特例の適用可否は個別の事情によって異なります。具体的な判断にあたっては、税理士・不動産会社などの専門家にご確認ください。

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※ 本記事は一般的な情報の提供を目的としたものであり、個別の物件の評価や税務・法務のアドバイスを行うものではありません。具体的な判断にあたっては、宅地建物取引業者などの専門家にご相談ください。