底地・貸地は売れるのか?借地人がいる土地の売却5ルートと「価格の現実」
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公開日: 2026年9月7日
親から相続した土地に、他人の家が建っている——。毎年わずかな地代は入ってくるものの、自分では使えず、固定資産税と相続税の負担だけが重い。「この土地、売れるのだろうか」というのが、底地(貸地)を持つ方に共通する悩みです。
結論から言うと、底地は売れます。ただし、更地や自宅の売却とはまったく違うルールで動く市場であり、誰に売るかで価格が数倍変わるのが底地の特徴です。この記事では、底地が売りにくい理由と、地主が取り得る5つの売却ルートを整理します。
底地とは——「土地の所有権」から「使う権利」を引いたもの
底地とは、借地権が設定されている土地の所有権のことです(貸宅地とも呼ばれます)。土地は地主のものですが、その上に建物を建てて使う権利(借地権)は借地人が持っています。
重要なのは、土地の価値が借地権と底地に分かれているという見方です。路線価図には地域ごとの借地権割合が定められており、都市部の住宅地では60〜70%が多くなっています。つまり税務上の整理では、更地価格のうち6〜7割が借地人側、残る3〜4割が地主側、という配分です。
ところが、市場で底地を単独で売ると、この評価どおりには売れません。ここが底地問題の核心です。
なぜ底地は売りにくいのか——3つの理由
- 買った人が土地を使えない:借地人には借地借家法の強い保護があり、契約更新の拒絶には正当事由が必要です(借地借家法6条)。「買っても自由に使えない土地」は、一般の買い手にとって魅力がありません
- 収益性が低い:古くからの借地は地代が低い水準で据え置かれていることが多く、投資対象として見ても利回りが出にくいのが実情です
- 住宅ローンの対象にならない:自宅用地ではないため、買い手は現金か事業資金で買える投資家・業者にほぼ限られます
この結果、第三者への単独売却では、更地価格の1〜2割程度と言われる水準まで下がることが珍しくありません。税務上は3〜4割の評価なのに、市場では1〜2割でしか売れない——この相続税評価と実勢価格の逆転が、底地が「持っているだけで損をしやすい資産」と言われる理由です。
底地は、収益が小さいのに相続税評価は高く、共有で相続すると次の世代でさらに分けにくくなります。地代収入と固定資産税・管理の手間を比べて収支がほとんど残らないなら、次の相続が起きる前に整理を検討する価値が高い資産です。親名義の底地がある場合は、まず相続登記から進めてください。
底地を売る5つのルート
ルート1: 借地人に買い取ってもらう
底地を最も高く評価できる買い手は、市場ではなく借地人自身です。借地人が底地を買えば土地が完全所有権になり、建て替えもローンも自由になるため、借地人にとっては更地価格との差額分の価値があります。実務では更地価格の40〜50%前後で折り合う例が多いと言われ、第三者に売るより大幅に有利です。
切り出すタイミングは、契約更新・建て替え承諾の相談・相続など、借地人側に動きがあるときが自然です。ただし、借地人に資金がない・高齢で建て替え意欲がないなどの理由で成立しないことも多く、断られる前提で次のルートと並行して考えます。
ルート2: 借地権とセットで「同時売却」する
借地人と協力し、借地権+底地=完全所有権として第三者に売却して、代金を割合で分ける方法です。買い手は普通の土地として買えるため市場価格がつきやすく、双方の手取りが単独売却より増えることが多い理想形です。借地人側も実家じまいなどで売却を考えているタイミングなら、利害が一致します。分配割合の合意が前提になるため、間に入る専門家の力量が問われます。
ルート3: 等価交換で完全所有権に分け合う
土地を分筆し、地主は借地権の一部を、借地人は底地の一部を相互に譲り合って、それぞれが小さくなった完全所有権の土地を持つ方法です。現金のやり取りを抑えつつ双方が自由な土地を手にできますが、分筆しても価値が保てる広さ・形状の土地であることが条件になります。
ルート4: 投資家・第三者に収益物件として売る
地代収入を目的とする投資家や不動産会社に売るルートです。価格は前述のとおり大きく下がりますが、借地人との交渉が不要で、地主側の都合だけで進められます。地代の水準・滞納の有無・契約書の整備状況が価格に直結するため、売る前に賃貸借の内容を整理しておくことが重要です。
ルート5: 底地の専門買取業者に売却する
底地・借地権を専門に扱う買取業者が、現況のまま直接買い取るルートです。契約書がない・地代が数十年据え置き・借地人が複数いる・相続で共有になっているといった、問題が重なった底地でも対応できるのが特徴です。価格はルート1〜3より下がりますが、「借地人と交渉したくない」「遠方で管理できない」「相続税の納税資金が必要」という場合の現実解になります。買い取った業者はその後、借地人との統合・整理を自社の事業として進めるため、個人が単独で動くより話がまとまりやすい面もあります。
売る前に整理しておきたいこと
どのルートに進む場合でも、次の準備が交渉力になります。
- 契約内容の確認:土地賃貸借契約書の有無、契約期間、地代、更新料の取り決め。古い借地では契約書がないことも珍しくありませんが、その場合も地代の受領記録が契約関係の証拠になります
- 地代・更新料の入金状況:滞納があるなら、売却の前に解消を求めておくほうが条件は良くなります
- 境界と面積:借地部分の範囲が曖昧な底地は多く、測量・境界確定の要否は早めに確認を
- 借地人との関係:ルート1〜3は借地人との協力が前提です。関係が良好なうちに方針を決めるほど選択肢が残ります。逆にこじれている場合は、無理に直接交渉せずルート4・5で「関係ごと手放す」判断もあります
なお、借地人側から見た売却の選択肢は借地権の家は売れるのかで解説しています。地主と借地人は利害が対立する場面もありますが、同時売却や等価交換のように「協力したほうが双方の手取りが増える」構造があることは、両方の立場で知っておく価値があります。
どのルートが現実的か、状況から整理する
底地の売却は「借地人と話せるか」「時間をかけられるか」「他に相続・共有などの事情が重なっていないか」でルートが決まります。地代収入と税負担のバランス、次の相続までの時間も含めて、早めに方針を決めるほど選択肢は多く残ります。
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※本記事は2026年8月時点の情報をもとにした一般的な情報提供であり、個別の物件の査定・媒介や税務・法律相談を行うものではありません。底地・借地権の価格水準は地域の慣行や個別の契約内容によって大きく異なり、記載の割合は一般的な目安です。実際の売却・交渉・税務の判断にあたっては、不動産会社・弁護士・税理士などの専門家にご相談ください。
※ 本記事は一般的な情報の提供を目的としたものであり、個別の物件の評価や税務・法務のアドバイスを行うものではありません。具体的な判断にあたっては、宅地建物取引業者などの専門家にご相談ください。